相続

相続放棄

Q 遺産の中に山林があります。場所が遠方なので、管理のことも考えると山林は相続放棄をしたいのですが。
A 山林だけを放棄することはできません。

民法896条に以下のように定められています。
「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。……」
つまり、相続とは、すべてを引継ぐことです。これを、包括承継と表現したりします。
相続では、よく知られているように故人の「債務(借金)」も引継ぐことになります。
借金だけ、放棄するのはできなさそうなのは、感覚的にも分かりますよね。
「でも、山林は借金と違って、一応プラスの財産なんだから放棄ができても良さそうなのに」と思われるかもしれませんが、だめなんです。

相続放棄の条文をみてみましょう。
「相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。(民法939条)」
放棄をすると、相続人ではなくなります。相続人ではないので、一部の財産だけを引継ぐなんてことは、当然できなくなります。
つまり、全部を引継ぐか、全部を放棄するか、を選択することになります。

※補足 債務がいくらあるのか分からない場合に、相続財産の限度で債務を弁済し、財産が残ればそれを引継ぐ制度として「限定承認(民法922条)」があります。いかにも、良さそうな制度ですが、実務ではほとんど用いられていません。なぜなら、手続きが非常に大変だからです。たとえば、相続人全員が家庭裁判所に限定承認の申述をしなくてはならないなど……。ほかにも、いろいろとクリアしなくてはいけない要件があります。